「人間はついつい自分に甘くなりがちで、自分にかかわる問題が起こると、
自分の非を問わずに、社会のせいにしたり、会社のせいにしたりする。
相手のせいにする前に、その相手にどうしてあわせられなかったかと自分を反省すべきである。
私は、決して人のせいにはしない。
どんなことでも、自分が関係したことで何かまずい結果が出た時には、最低50%は自分の責任だと思う。
注文が取れなくてよそに取られた場合に、それは製品が悪いから、値段が高いから、
なにかが悪いからだというように転嫁してはいけない。やっぱり自分がどこか足りなかったんだと反省しなくてはならない。
少なくとも、大塚商会で働いている人のなかに、責任を転嫁して自分は怠ける人をなくしたい」と語っていた。
大塚氏は幹部に対して、「病的なまでに不安感を持ちなさい」と言ってきた。
それは自らが病的なまでに不安感を持った経営をしてった。きたことを示す言葉でもあった。
「大塚商会から買ってもらったお客さまに、やっぱり大塚商会は言ったことを守った、
期待した通りのことをやってくれたと言ってもらわなくてはならない。
お客さまを大塚商会のファンにして、もう逃げられないくらいに思ってもらわなくてはならない。
それが今日の大塚商会を作っている」と、大塚氏は語っていた。
この精神はいまでも息づいているといえる。
「水平線のむこうに一点の雲が出たら、いい天気だと思うのではなく、その雲が発達して、暴風雨になってやってくるかもしれないと不安感で受け取る。
それを調べて、暴風雨になることがわかったら、早い段階から対策が立てられる。雲はいたるところで生まれるから、不安はいたるところにある。
新聞や雑誌も、漠然と読むのではなく、なにかが起こるのではないかという不安感を持って読まないと変化の兆しを見つけ出すことができない」
病的な不安感が、大塚氏の経営手法につながっているエピソードだ。